交通事故トラブルについて

「示談とは」

交通事故の事後に必ず問題となるが示談です。
示談とは、簡単に言うと「トラブルの当事者あるいは関係者が、話し合いにより問題を解決する事」です。
交通事故の示談では、本来なら被害者と加害者との間で事故の損害について話し合われる事になるのですが、加害者が示談交渉権付きの任意保険に加入していたら被害者は相手の保険会社と示談交渉をしなくてはなりません。

 

この保険会社との示談交渉がやっかいなのです。
実際の示談の現場では、「細かな条件でなかなか折り合わない」「保険会社の対応が悪い」「後遺症が残っているので示談したくない」など、様々な理由で示談を先延ばしにするケースがよくあります。
保険会社と示談をしないとどうなるのか?そもそも示談をしない解決方法はあるのか?
交通事故の示談について以下に説明します。

 

□交通事故の示談とは?

日本のドライバーの約7割が任意保険に加入しているため、交通事故の示談は被害者と保険会社の間でおこなわれるのが一般的です。
ここでは被害者と保険会社の傷害事故の示談について説明します。
交通事故が起きると、被害者はまずは治療を優先する事になります。
その治療が終了すると保険会社は「治療費」、「慰謝料(逸失利益、休業損害、後遺症)」など損害賠償額を算出します。
保険会社はそれを示談書という形にして被害者に対して示談の提示をします。
この示談内容に双方が合意し、示談書にサインをすれば示談が合意となります。
一度示談に合意すれば、その後は原則として(示談後に後遺症が発生した場合は別)示談のやり直しはできません。
示談は問題を早期に解決して和解できるメリットがある反面、当事者同士が示談交渉に臨むと感情的になり示談が成立しにくい面もあります。
また、示談の知識や情報を持つ側である保険会社が得をして、持たない側である被害者が損をするなど公平さを欠くケースがよく見られます。

 

□示談金の基準

示談で損をしないために、まずは示談金の算定には基準があることを知るべきです。
示談金とは示談の際に加害者側から被害者に払われるお金、つまり損害賠償金です。
損害賠償金は治療費(積極損害)・休業補償(消極損害)・慰謝料・弁護士報酬などから成り立ちます。
損害賠償金は言い値のように適当な金額で決められているのではなく、保険会社や弁護士などによって算定基準が設けられており、それに則って算出されます。
どれを採用するかによって金額が変わるのですが、示談金の相場基準は以下の3つです。
・自賠責保険基準
・任意保険基準
・弁護士(裁判)基準
このうち、もらえる示談金が最も高いのが弁護士基準です。
弁護士基準は、弁護士に依頼した際の示談金交渉に使われます。
そのため、弁護士に依頼する場合が最も示談金の相場が高くなると言えます。

 

□交通事故の示談の現実

交通事故の示談交渉は、症状固定のタイミングから始まる事は稀で、実際には事故後に加害者の代わりに保険会社の担当者から連絡がきて始まります。
担当者は「治療方法」や「整骨院への通院」など、事細かく横やりを入れてきたり、「過失割合」や「収入証明」など示談の重要な局面で意見を主張してきます。
そのため、示談交渉の場では被害者と保険会社の間で頻繁にトラブルが起こります。
担当者が厳しい交渉をする理由は保険会社の「示談の考え方」「対応マニュアル」「社内で決められた賠償基準」によるもので、保険会社としては事故後できるだけ早期に処理し、かつ賠償額を少なくしたいのです。
保険会社が示談を急ぐ理由としては、
・治療費を少しでも少なくしたい
・休業損害、逸失利益をできるだけ少なくしたい
・長引かせて後遺障害認定をしたくない
・単純に案件を早く終わらせたい
・最も低い補償の自賠責基準で示談したい

 

□保険会社との示談交渉に嫌気がさす被害者

交通事故の示談交渉に出てくる担当者は、事故、保険、医療、法律について教育を受けており知識豊富です。
保険会社の交渉マニュアルに沿ってもっともらしく説明し、被害者の主張を聞き入れず、保険会社の賠償基準を押し通そうとします。
保険会社がよく使う示談テクニックには、
・過失割合の主張を曲げない
・治療の打ち切りを宣告する
・症状を固定するように促す
・後遺症は無いと断定する
このように交通事故の示談では、「保険会社の対応に不満がある」、「説明に納得できない」など担当者と示談交渉する事自体に嫌気がさすという声もよく聞かれます。
 

□示談しないとどうなるのか?

このように交通事故では保険会社とトラブルを抱えてしまい「示談したくない」と考える被害者は少なくないです。
しかし示談しないと様々な問題が起きることを理解しておかなくてはなりません。
交通事故では、被害者が加害者に対して損害賠償を請求できる権利がありますが、これはあくまでも権利ですから、行使をしてもしなくても自由ですし、話し合いによる解決に臨むも臨まないのも自由というのがタテマエです。
しかし、実際問題として、被害者が損害賠償請求権を行使しないと損をする事になります。
それは、事故の解決ができないだけでなく、示談金を受け取ることができないからです。
示談金を受け取れないとなると、ケガの治療費や車の修理代が自腹となり、会社を休んだ分の給与の補償ももらうことができません。
実は、加害者は示談が進まないことに対して、困る事はないのです。
加害者は示談に応じようと試みただけで反省の意図がある証拠とみなされ、刑事処分を決める際に情状酌量される可能性があり、示談が進まない事は加害者にとってはむしろ好都合なのです。
示談せずに、法的解決もしなかった場合にどうなるかと言うと、時効によって損害賠償請求権が消滅し、永久に慰謝料が手に入らなくなってしまうのです。

 

□賠償請求の権利期間

損害賠償請求権は何年で時効になるかと言うと、法律では、交通事故などの不法行為に基づく賠償請求の権利は、3年で時効にかかって消滅すると定められています。
3年というのは、被害者が事故と加害者の両方について知った時から計算で、通常は事故の日から3年ということになります。
ひき逃げのように当初は加害者が不明の場合には、加害者が分かってから3年、もしくは事故の日から20年のうちどちらか短い方が適用されます。
3年で消滅するのは「請求できるのにしなかった」のが理由ですから、加害者が判明するまでは「3年の期間の開始」はしないのです。
また、事故後かなりの時間が経ってから後遺症が発症する事がありますが、その場合は「後遺症についての医師の診断書が出た日から3年間」となります。

 

□時効の中断について

時効の中断といものもあります。
時効の中断というのは、一定の要件を満たせば、時効期間の計算を最初からやり直すという仕組みです。
中断後、時効期間の計算を途中から再開するのではなく「最初からやり直す」というところがポイントです。
中断に該当するものにはいくつかの種類がありますが、一つは、加害者が賠償責任を認める行為で、加害者が治療費の一部を先に支払うという事がこれに該当します。
金額の細かいところで見解が折り合ってなくても、賠償責任を負うこと自体は認めているという意味で、治療費の一部支払いによって時効が中断し、その時から再び3年の計算が始まります。
という事は、少しづつでも治療費などの取り立てを行っておけば、時効消滅のリスクが少なくなるという事です。
時効の中断のもう一つは、裁判など正式な法的手続きに出る事です。
法律的には「請求」と言いますが、3年が経過しそうなのに解決の糸口が見えない局面では、このような手段に出るしかないでしょう。
ただしその場合、正式な裁判手続きに出る前に内容証明郵便を送ることで時効消滅が6ヶ月先延ばしできるという仕組みもあるので、実際にはそちらから実行する事になるでしょう。
以上は加害者に対する請求権の時効についての話ですが、保険会社に対する保険金の請求権については2年間で時効が消滅します。
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