ストーカーについて

「民事上の責任を取るとは」

加害者は相手に自己犠牲を求める事が多々あります。
しかし、民事上の責任を取らせるために、お金以外の自己犠牲(身体、生命、時間、職業、他の人間関係など)を求める事はご法度です。
法的に認められる民事責任の対象は「不法行為」と「約束違反」の二つしかありません。
精神的な苦痛を与えられたと言うのなら、法律家に相談して正式に慰謝料を請求すればいいのです。
もちろん、結果が自分の望み通りになるかどうかは分かりません。

 

お金で解決できるならいいかと、サッサと払う被害者もいますが、世間的にはわずかなお金でも払った方が債務者と見なされるので、安易に応じるのは止めた方がいいでしょう。
捨て金同然の解決金であっても、加害者は慰謝料だと主張したがりますから、示談所(和解の合意書)でお金の意味を明示する事、授受に関する条件を取り決める事が必須です。
例えば「直接間接にかかわらず、いかなる手段においてもお互いと双方の家族、友人、仕事関係者に接触しない」という約束の文言が含まれなければいけません。

ともあれ、金銭の話が出てきたらストーキングは沈静化に向かっていると考えられます。
本質的に愛とお金は共存できないようで、お金による解決が見ててくる時には、すでに愛は問題となっていないのです。

 

貸したお金はもちろん、共同生活なら家賃や食費、デート代まで逐一細かく計算する人もいます。
口約束でも婚約破棄だと言って高額の違約慰謝料を要求する人や、待ち合わせに遅刻した日時の記録をもとに時給換算で請求する人までいます。
明確な賃借関係は別として「付き合っていた間の費用を返せ」とか「私の身体を使った分を返せ」と言うような人は見ていて悲しみまで覚えますが、それでも解決が見えてきたなという感じはしてくるものです。

 

私は、恋愛をした責任は双方にあると考えますが、自然に愛が冷めていったのなら、それは仕方のない事です。
人間の感情というものは常に変わり続けているものなので、その事で「責任を取れ」とは誰も言えないのです。

 

 

出典: 「ストーカー」は何を考えているか /小早川 明子 /新潮新書

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