カウンセリング
DVのご相談の中で際立って多いのが DV被害者の方が精神疾患を持たれているパターン、もしくは配偶者またはパートナーから「精神疾患を持っている」と思われているパターンです。
このパターンは夫が加害者で妻が被害者である事がほとんどなのですが、奥様の「症状の重さ」に関わらず、怪我をするような直接的暴力があるのであれば充分対応の仕様があると思います。
しかし問題は 怪我をするような直接的暴力のない、言葉の暴力であったり、物にあたる行為であったり、モラハラ的要素の強いものです。
これはとてもデリケートな問題で、非常に難しい要素を孕んでいるのですが、現実的にそのほとんどの方が泣き寝入りとなっています。
旦那様が「奥様が通常ではない」事に対してイライラしてしまう気持ちは分からなくもありません。
精神を患われている方は、かなり攻撃的になる事もあるので、その場面その場面では「どっちもどっち」とも言える状況であったりもします。
よく「経済的DV」を訴える方も多いのですが、その病状によっては 旦那様がお金の管理を任せられず、必要最低限のお金しか渡さないのも致し方ない面もあるかもしれません。
もし「重度の疾患」であった場合には、実際に被害妄想や事実誤認などもあるので、もしかしたらDV行為がある事自体を立証するのが難しいかもしれません。
そもそも 精神的な病気を持たれている方は「怪我をするような直接的暴力のないDV」や「モラハラ」に対する 法的対抗力を過信する傾向が強いようです。
水戸黄門の印籠のような印象をお持ちの方が多いようですが、決してそんな事はありません。
精神疾患があるないに関わらず、そのレベルのものでは「離婚事由」的にも「慰謝料請求」的にも「有責配偶者」的にも〝弱い〟(決定的ではない)という事だけは覚えておいて下さい。
「これは立派なDVでしょ!?」と仰る方が多いのですが、仮にDVにあたるからと言って 何でもかんでも思い通りになるわけではないのです。
【怪我をするような直接的暴力があるのか?】
まずは これを一つの目安にして下さい。
そして
【法的に有効な証拠があるのか?】
が 非常に重要となってきますが、ないのであれば 証拠を取るお手伝いをさせていただく事は可能です。
決定的な「離婚事由」がない場合、相手が離婚を拒否したら、とりあえず別居をするしかなくなります。
しかし精神障害をお持ちの方は
「引っ越すお金がありません」
「私は障害があるので働けません」
「親と喧嘩をしているので 実家にも帰れません」
などの事を仰るケースが非常に多く、そのような状況では 現実的に自立をして別居生活を送る事は難しいと思います。
また、ご本人は実際に嫌な思いをされているのですが、現実的に
「旦那様がいなければどうにもならない」
「文句を言われながらでも 旦那様に支えられている」
というような側面がある事も少なくありません。
このようなケースでは すぐに警察を呼ぶパターンが多いのですが、警察の対応を見ていても 明らかに通常とは違う〝困惑の色〟が伺えます。
警察は意外と そういうところはちゃんと見ていますし、ちゃんと考えてくれています。
受けているDV行為(モラハラ)の程度や頻度にもよりますが
「その旦那様と一緒にいた方が本人のためなのか、離れた方が本人のためなのか」
判断が難しいところでもあり、本人が大騒ぎをしたところで逮捕ができるような案件ではありません。
このようなケースの場合、警察には最終的には必ず
「では、旦那様から離れて下さい。」
と言われます。
実質的に これしか言いようがないのですが、それに対して「お金がない」「働けない」「実家に帰れない」と言われても、それは国や他人がどうこうできる問題ではないので、そのうち警察にも あまり相手にされないような状況になってしまうのです。
そのような状況になった後に 弊社がご相談を受けるパターンが多いのですが、そのような状態では弊社としても正直なす術がありません。
結論として どうしても旦那様と暮らすのが嫌なのであれば、何とかご自分でお金を貯めて 自立できるような状況を作るしかありません。
またその逆で、奥様が精神的な病気である事をいい事に やりたい放題をする夫がいるのも事実です。
中には「怪我をするような直接的暴力」もあり、浮気もし放題で、お金を全く家に入れてくれないと思っていたら、いつの間にか浮気相手と一緒に暮らしていて 事実上の別居になってしまっているような酷い状態のものもあります。
このような場合 奥様の障害の程度はもちろん、「受けているDVの程度や頻度」も全く関係ありません。
「不貞の証拠」だけしっかりと取得し、全面的に対抗するべきだと思います。
「精神疾患とDVの問題」
心の病に関しては 世間はフタをして触れないようにする風潮がありますので、このような問題はあまり語られる事がありません。
「精神の病気を持たれている方の言葉を どこまで真に受けていいのか?」
という究極的な判断の難しさと、究極的にセンシティブな部分が この問題の根底にあると思います。
また ご本人自体にも躁鬱、調子の良し悪しがある上に
「外からは 病気の進行具合の判断が難しい」
という部分もあると思います。
一つ判断を間違えると、自身も 差別だ何だと攻撃の対象となりうるので、そのリスクの高さを考えて 誰も深入りしよう 語ろうとはしないわけです。
私としても 最も苦手とするパターンではあるのですが、実際に解決が困難である 非常に難しい問題だと思います。