(1) 民法上の詐欺 詐欺によって意思表示した者は、これを取消すことができる。
ただし、その取り消しは善意の第三者に対抗することはできない (96条1項,3項) 。
なお詐欺によって生じた損害は、不法行為として詐欺者に損害賠償させることができる。
(2) 刑法上の詐欺 人をだまして財物を取得したり、財産的利益を得たりした者 (だました者以外の他人が取得する場合も含む) は、詐欺罪で罰せられる (246条1項,2項) 。
「詐欺罪」とは、相手が財物を交付したくなる意思を起こさせる詐欺行為を行い、錯誤に陥らせ、財物を交付する行為のことです。刑法では下記のように規定されています。
刑法246条
1.人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
詐欺には、大きく分けると「財物詐欺罪」「利益詐欺罪」「電子計算機詐欺罪」に分けられる。
一様に詐欺と言っても、無銭飲食のように単純なものから、振り込め詐欺のような計画的なものまで様々なタイプのものがあり、その内容や被害額などによって、起訴猶予や執行猶予になるのか、いきなり実刑になるものかも変わってきます。
詐欺罪が成立するには、欺罔により錯誤を生じさせ、その結果、財物・財産上の利益を「交付」させる必要があります。
欺く事と財物の取得では足りず、相手方の意思で交付する必要があります。
従って、人を騙し、注意を他にそらせておいてその隙に物品を持ち去るような行為は詐欺ではなく、窃盗になります。
更に、詐欺罪において、交付行為が成立するには、被欺罔者の意思に基づいて、財産の占有が終局的に移転することも条件となります。
詐欺罪の特徴は他の刑事事件に比べて判断が難しく、詐欺罪が成立する判断基準としては「欺罔(ぎもう)→錯誤→交付行為→財産の移転」この因果関係が一連の流れで行われている必要があります。
【1】犯人が騙すつもりで被害者を騙した(欺罔行為)=人を騙す行為。
【2】被害者が騙された(錯誤)=人を騙した結果、相手に勘違いをさせたり、事実とは違った認識を植え付けること。
【3】被害者が騙されたまま、自分の財産を処分した(交付(処分)行為)=相手を騙したことにより金品をもらうこと。
【4】処分した財産を被害者が、犯人または第三者に渡した(占有移転、利益の移転)=上記に対する因果関係について。
この交付行為→財産の移転 は、振込記録などをみて確認できますが、問題なのは、欺罔→錯誤の部分です。
詐欺の場合、この欺罔行為を行為者の主観面の立証が必要なため、詐欺の立証が大変難しくなっています。
例えば、相手にお金を貸したが返って来なかった場合、仮に相手が本心では「お金をだまし取ってやろう」などと考えていても、「後でしっかりと返すつもりだった」などと言われてしまえば、詐欺行為として立証することはできません。
詐欺にも様々手口があり、結婚詐欺、投資詐欺、振り込め詐欺、架空請求詐欺、還付金詐欺、リフォーム詐欺、在宅ワーク詐欺、霊感商法詐欺、ワンクリック詐欺、フィッシング詐欺、催眠商法詐欺、デート商法詐欺等があります。