ストーカーについて

ストーカー規制法とは

■ストーカー規制法とは

「つきまとい等」を繰り返すストーカー行為者を規制する法律で、正式名称を「ストーカー行為等の規制等に関する法律」といいます。
この法律が制定されたことで、脅迫や暴行などの実行には至らない「つきまとい行為」を行った相手に警告や禁止命令を出したり、その相手を逮捕したりできるようになりました。
ストーカー規制法では「つきまとい等」とは具体的に大きく8つに分けて示されています。
これらの行為を繰り返すことが「ストーカー行為」とされています。

この法律による規制の対象となるのは

①「つきまとい等」
②「ストーカー行為」

の二つです。

 

①「つきまとい等」とは

この法律では、特定の者に対する恋愛感情その他の好意感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、その特定の者又はその家族などに対して行う以下の8つの行為を「つきまとい等」と規定し、規制しています。
1. つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき (ストーカー規制法 第2条第1項第1号)

被害者の出先までついてきたり、目的地で待ち伏せをしたり、家の近くをうろついたりすること。
・尾行し、つきまとう。 ・行動先(通勤途中、外出先等)で待ち伏せする。

・進路に立ちふさがる。

・自宅や職場、学校などの付近で見張りをする。 ・自宅や職場、学校などに押し掛ける。

・自宅や職場、学校などの付近をみだりにうろつく。

 

2. 監視していると告げる行為(ストーカー規制法 第2条第1項第2号)

何らかの方法で被害者を監視し、「今帰ってきたんだね」「いつも見てるよ」などと告げるような行為。

・行動を告げ、監視していることを気づかせる。
・帰宅した直後に「お帰りなさい」などと電話する。
・よくアクセスするインターネット上の掲示板に、上記の内容などの書き込みを行う。

 

3. 面会や交際の要求(ストーカー規制法 第2条第1項第3号)

もう会いたくないような状況なのに「会ってくれ」「よりを戻してくれ」などと要求してくること。

面会や交際、復縁等義務のないことをあなたに求める。
贈り物を受け取るように要求する。

 

4. 乱暴な言動 (ストーカー規制法 第2条第1項第4号)

大声で「死ね」「馬鹿野郎」などと言ってきたり、家の前で大声を出して暴れたりするなどの行為。
大声で「バカヤロー」などと怒鳴る
「死ね」などの乱暴な言葉やメールをする。
家の前で大声を出したり、車のクラクションを鳴らしたりするなど乱暴な行動をする。

 

5. 無言電話、連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS等 (ストーカー規制法 第2条第1項第5号)

Eメールだけではなく、LINEなどの送信やSNSやブログなどへの書き込みなども含まれます。
電話をかけてくるが、何も告げない。(無言電話)
拒否しているにもかかわらず、携帯電話や会社、自宅に何度も電話をかけてくる。
拒否しているにもかかわらず、何度もファクシミリや電子メール・SNS等を送信してくる。

 

6. 汚物などの送付 (ストーカー規制法第2条第1項第6号)

嫌悪感を覚えるようなものを相手に送り付ける行為。

汚物や動物の死体など、不快感や嫌悪感を与えるものを自宅や職場に送りつける。

 

7. 名誉を傷つける (ストーカー規制法 第2条第1項第7号)

被害者の職場に誹謗のチラシを送ったり、インターネット上に中傷するような書き込みをしたりして名誉を傷つける行為。

・中傷したり名誉を傷付けるような内容を告げたりメールを送るなどする。

 

8. 性的しゅう恥心の侵害(ストーカー規制法 第2条第1項第8号)

卑猥な画像や動画を送りつけるなどの行為のことです。

わいせつな写真などを、自宅に送り付ける。
電話や手紙で、卑わいな言葉を告げ恥しめようとする。

 

②「ストーカー行為」とは

同一の者に対し「つきまとい等」を繰り返して行うことを「ストーカー行為」と規定して、罰則を設けています。但し「つきまとい等」の1から8までの行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われた場合に限ります。

 

■ストーカー行為の罰則

1.ストーカー行為をした場合

以前まで、ストーカーは親告罪であり、被害者からの告訴がなければ逮捕できませんでした。しかし2016年の改正で非親告罪となり、被害者からの告訴がなくても逮捕ができるようになりました。
その場合の罰則は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」となっています。

2.禁止命令を破ってストーカー行為をした場合

被害者からストーカー行為の相談があった場合、警察は相手をすぐ逮捕するのではなく、相手に「警告」を出すこともできます。それでも行為がやまない場合はさらに効果の強い「禁止命令」を出しますが、それにも従わずストーカー行為を続けた場合、上記よりもさらに重い「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」という罰則が規定されています。

 

■ストーカー規制法の改正の歴史と、改正に影響を及ぼした重大事件

●桶川ストーカー殺人事件(1999年10月)
□2000年(平成12年)5月、ストーカー規制法制定(同年11月施行)
●新橋耳かき店員ストーカー殺人事件(2009年8月)
●長崎ストーカー殺人事件(2011年12月)
●逗子ストーカー殺人事件(2012年11月)
□2013年(平成25年)6月改正ストーカー規制法制定
【改正事項】
・電子メールの連続送信の規制等(7月施行)
・禁止命令等を行うことのできる公安委員会の拡大等(10月施行)
●三鷹ストーカー殺人事件(2013年10月)
●小金井ストーカー殺傷事件(2016年5月)
□2016年(平成28年)12月改正ストーカー規制法制定
【改正事項】
・SNSメッセージの連続送信等の規制、罰則の見直し等(平成29年1月施行)
・禁止命令等の制度の見直し(平成29年6月施行)

 

 

・桶川ストーカー殺人事件と2000年11月の「ストーカー規制法」の施行

平成11年に埼玉県桶川市で発生した、日本のストーカー事件史上最も有名なストーカー殺人事件です。
この凄惨な事件をきっかけに「ストーカー規制法」が制定されたことでも知られています。
特にこの事件では「ストーカー規制法」がない時代だったとはいえ、警察のあまりにズサンな対応が「殺人事件」という最悪の事態を招いたとしてマスコミに取り上げられたこともあり、多くの警察関係者が処分される事態となりました。
女子大学生が元交際相手の男を中心とする犯人グループから嫌がらせ行為を受け続けた末、1999年(平成11年)10月26日に埼玉県桶川市のJR東日本高崎線桶川駅前で殺害された事件です。
この事件をきっかけとして、2000年11月にストーカー規制法が施行されました。

 

・逗子ストーカー殺人事件と2013年7月の法改正

ストーカー規制法が成立した当初は、連絡手段としてのEメールはまだそこまで一般的ではなく、条文の中の「つきまとい行為」にはEメールの送信が想定されていませんでした。
この事件は、被害女性が以前の交際相手にストーカー行為をされ、その果てに刺殺されるという大変痛ましいものでした。
加害男性はそれ以前にも女性に「刺し殺す」などのメールを送ったことが理由で脅迫罪で逮捕されているほどでしたが、その男性はその事件で執行猶予となったあとも、計1000通以上の嫌がらせメールを女性に送信します。
女性は再度警察に相談しましたが、この時点では「Eメールの連続した送信」は規制の対象外だったため、警察としても動けなかったのです。
この事件がきっかけとなり、2013年(平成25年)7月の法改正で 「Eメールの連続した送信」も追加されました。

 

・小金井ストーカー殺人未遂事件と2016年12月の法改正

逗子の事件がきっかけで「Eメールの連続した送信」がストーカー規制法上の「つきまとい行為」に追加されましたが、その後コミュニケーションツールとしてEメールをしのぐ勢いで発展していったのがLINEやtwitter、facebookなどのSNSです。
しかしこれらを利用したメッセージの送信やブログなどの書き込みは「Eメールの送信」とは別の行為であるとされ、2013年の改正でも対象外でした。
この事件は芸能活動をしている女性がファンを名乗る加害男性に刃物で刺されたというものであり、男性はtwitter上で女性にメッセージを送り続けるなどしており、身の危険を感じた女性は警察に相談もしていました。しかし逗子の事件と同様「twitterなどのSNSへの連続した書き込み」はストーカー規制法の対象外だったため、事件が起こるまで警察は加害者を逮捕することができなかったのです。
これがきっかけで、「インスタントメッセージやSNS、ブログなどへの連続した書き込み」が2016年12月の法改正で「つきまとい行為」に追加されました。

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