ストーカーについて

「共依存」

心が病態にあるのは加害者だけではありません。
ストーカー問題が起これば大抵の被害者は精神病に陥り「私が悪いのかもれない」と自己否定したり「何をしても別れられないなら、別れるのを諦めて死んだように生きればいい」とまるで殉職者のように自己を放擲してしまう事もあり、こういう人にもカウンセリングが必要です。

 

被害者はまず、自分が被害者だという自覚を持つべきです。
相談に来た当初は「自分も悪い」と言う人が多く、その気持ちが警察へ行く事を躊躇わせています。
なので私は「どんなに自分の性格や態度が悪かったとしても、ストーキングという犯罪の被害者になるいわれはない」と言います。
被害者としての怒りを持たせる事、そして自分には自分を守る権利があるという当たり前の意識を持たせる事からスタートします。

 

被害者の中には「誰も助けてくれない」「助けてもらう価値は自分にはない」と不安と悲嘆に暮れている人がいますが、これは「共依存」という心理病態です。
「もしかしたら、あの人は今度こそ変わってくれるかもしれない。今度こそは分かってくれるかもしれない」と思いこむ共依存の関係は、火のついた家の中で、それに気づかず二人きりで争っているようなものです。
誰かが飛び込んで「火事だ!」と叫ばなければ出てこない。
誰かの客観的な介入がなければ、加害者も被害者も容易には抜け出れないものなのです。

 

それでも外部に相談できる被害者はまだ理性を持っていますが、共依存が進んで「感応」や「マインドコントロール」の中にいると、火事だと言われても認めようとしない、認める事ができなくなるのです。
そういう被害者の救出は、私の仕事の中でも最も難しい部類に入ります。

 

 

出典: 「ストーカー」は何を考えているか /小早川 明子 /新潮新書

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