DVについて

タイプ別DV加害者の特徴「精神疾患・依存症を持つ男」タイプ

「精神疾患あるいは依存症をもつ男」タイプ

この最後のタイプと他のタイプに違いは全くありません。
これまでに見てきたタイプのDV加害者の誰もが、精神的な問題や依存症の問題を抱えていても不思議ではありませんが、実際はほとんどの人にこのような間題はありません。
精神疾患や依存症が虐待の要素のーつに挙げられる場合でも、それは虐待の原因にはなりません。
しかし、虐待の深刻さや自分を変える事に対しての抵抗に関係してくる事があります。
DV加害者に精神疾患や依存症の問題もあるような場合は、次の点に注意して下さい。

1.精神疾患の中には、DV加害者が危険になって身体的暴力を振るう可能性を高めるものがあります。

パラノイア(妄想症)、深刻なうつ病、幻覚(精神病)、強迫神経症、反社会的パーソナリティ障害(精神病質あるいは反社会病質と呼ばれる)等です。
加害者がこれらの精神疾患を持っている場合、変わることは不可能に近いでしょう。
少なくとも心理療法や投薬によって精神状態が安定するまでは難しいでしょうし、安定するまでに何年も掛かる事があります。
精神疾患が完治しても虐待がなくなるとは限りません。

2.治療薬を飲み始めた時や飲むのをやめた時に、DV加害者がどうなるか分かりません。

そのような時は特に身の安全を守るために事前に対策を練っておきましよう。
加害者は薬を飲むのをじきにやめてしまう傾向があります。
責任を持ってきちんと長期的に薬を飲み続けた加害者はあまりいません。
副作用を嫌がるし、とても自己中心的なので、女性や子供たちに自分の精神障害がどのような影響を与えるか気にしないのです。

3.精神疾患をもつ加害者の危険性は、精神疾患の症状の程度と虐待行動の性質の激しさの両方を見て評価されるぺきです。

精神疾患の症状だけを見て評価すると、危険性を過小評価してしまう恐れがあります。

4.反社会的パーソナリテイ障害は、加害者のほんの数パーセントにしか見られませんが重要な要素です。

この障害をもつ人は良心が欠けているので、他の人にも危害を与える行動を繰り返します。
この障害の徴候には次のようなものがあります。
・十代のころから違法行為をしています。
・不正行為や暴力行為を、相手の女性に関わる事だけではなく、彼女とは関係のない事でもします。
・職場やその他の場で、盗みや脅迫、あるいは指示に背くといった問題をたびたび起こします。30歳までに相当な犯罪歴を持っているかもしれません。
・常にひどく無責任で、まわりの人たちの生活を混乱に陥れたり、危険な状況を作り出したりします。
・よく浮気をして、相手の女性たちをお互いに敵対させますが、その女性たちとは薄っぺらな関係しか持ちません。
一般的に考えられてるように、精神病質者がひどい身体的暴力をするとは限りませんが、それでも大変危険な場合もあります。
反社会的パーソナリティ障害者を心理療法で変えることはとても難しく、効果が期待できる治療薬もあません。
女性に対する虐待行動に結びつく危険性が高い障害です。

5.自己愛性パーソナリテイ障害を持つ人は、非常に歪んだ自己イメージを持っています。

自分に欠点があるかもしれないという事を受け入れられないので、他の人たちにどう見られているか想像する事ができません。
この障害は虐待行動に関係がありますが、加害者の数パーセントにしか見られません。
この障害を示すサインには次のようなものがあります。
・その人の自己中心性は大変強く、相手であるあなたとは関係のない状況でも自己中心的な行動をします。
・何事も自分に関連があると考えてしまいます。
・誰かに批判されると大変怒り、自分が優しくて寛大な人間ではないなんて想像もできません。この障害を持っていると心理療法を嫌うし、薬で治療することもできません。

6、自分の考え方や行動に対する責任から逃れようとして、自分は精神疾患を持っていないのに女性にそう信じさせようとする加害者が大勢います。

依存症は精神疾患と同じく、相手の女性に対する虐待の原因にはなりませんが、暴力の危険度を高める恐れがあります。
精神疾患を持つ加害者と同じく、依存症の問題を持っている加害者は、まずその依存の間題に取り組まなければ変わりません。
そして、そのような取り組みさえも初めの一歩にすぎないのです。

 

「精神疾患あるいは依存症をもつ男」タイプの主な考え方

・精神疾患あるいは依存症の問題を抱えているので自分の行為に責任はない。
・僕は他の問題を抱えているのだから、僕の虐待行動について問い話めるなんて意地が悪いし、僕の他の問題に理解を示してくれていないという事だ。
・俺は虐待なんてしていない。アルコール依存症、薬物依存症、躁うつ病、アルコール依存症のアダルトチルドレン等であるだけだ。
・君が僕をとがめたりしたら、そのせいで依存症や精神病が誘発されてしまう。だからその場合は僕の行動の責任は君に取ってもらう。

 

 

〈出典:DV・虐待加害者の実体を知る/ランディ・バンクロフト/監訳 高橋睦子 中島幸子 山口のり子/出版 明石書店〉

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