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タイプ別DV加害者の特徴「水攻め男」タイプ

「水攻め男」タイプ

「水攻め男」の手口は、怒りが虐待の原因ではないことを証明しています。
声を上げもせずに相手を心理的に攻撃してしまうからです。
ロゲンカになると冷静さを保ち、自分の平静さを武器にして相手の正気を失わせます。
偉そうな、あるいは軽蔑したような薄笑いを浮かべ、自信ありげな物怖じしない雰囲気を漂わせます。
攻撃的な話し方をいろいろ知っていて、それらを冷酷に使います。
例えば嫌味を言う、大っぴらに相手を笑ってバカにする、話し方を真似る、残酷で傷つくようなことを言うといった手口です。
「最高権威男」と同じように、相手の女性が言った言葉を元々の意味が全く分からなくなってしまうほどねじ曲げて、特に他の人たちの前で彼女がバカげていると見せかけようとする傾向があります。

一滴づつ水を垂らすように、軽い、しかし確実な心理的打撃をゆっくりと彼女に加えて精神的に迫いつめます。
時々軽く押したり、目に見えるケガは残さずに、心理的には大きな害を与える恐れのある「軽度な」暴力行為をする事もあるでしょう。

 

「水攻め男」の静かなあざけりと意地の悪さには情け容赦がありません。

こういった巧妙な手口を使われると、女性は頭に血が上るほど怒りを感じるか、自分が愚かだと感じたり劣等感を持ったりするか、あるいはこの両方が混ざった反応を示します。
口ゲンカの間中、不満が溜まって怒鳴ってしまったり、泣きながら部屋を出て行ってしまったり、黙り込んでしまうことがあるでしよう。
すると「水攻め男」はこう言います。
「ほら見ろ、暴力的なのは僕じゃなくて君の方だよ。怒鳴ったりして、理性的に話し合って解決しようとしないのは君の方だ。僕は声を上げる事すらしなかったじゃないか。全く君とは論理的に話せないよ」

 

「水攻め男」とー緒に暮らすと、あなたの心に深刻な悪影響が及びます。
このタイプの男性が使う手口は見分けにくいので、気づかないうちに深く傷ついてしまうのです。
男性からされる行為をどう説明すればよいかさえ分からないので、それらの行為に対して自分が反応してしまうのは自分に問題があるからだと考えてしまいます。
誰かに顔を平手打ちされれば、平手打ちされたのだと分かります。
しかし「水攻め男」との口論は何が理由で攻撃されたのかも分からず、女性は自分の不満を内に溜め込むようになります。
何がおかしいのかどう説明したらよいか分らないのに、一体どうやって友人に助けを求められるでしようか。

 

「水攻め男」は、 自分の行動に何も変なところはないと心から信じている傾向があります。
遅かれ早かれ相手が彼の虐待的なー面について問い詰め始めると、彼は「一体全体何を言ってるの?僕は君に何もしてないよ」と、頭でもおかしいのかというように相手の女性を見ながら言います。
彼と相手の女性のやりとりを目にした事のある友人や親戚も、彼の味方をするかもしれません。
首を傾げながら「彼女はどうしてああなのかしら?時々彼に向かってとにかく感情的に爆発してしまうのよ。彼の方は感情的にならない人なのに」と言います。
子どもたちは母親が「何でもないことでカッカする」と思うようになるかもしれません。
女性自身も自分は精神的にどこかおかしいのではないか疑うようになるかもしれません。

 

「水攻め男」も他のタイプのDV加害者と同様、仕返しすることを重視していますが、比較的うまく隠している人が大勢います。
もし加害者が身体的な虐待をする場合、暴力行為は爆発的な怒りの形を取るよりは、むしろ「お前のためだ」とか「目を覚ませ」といった無情な精神的な打撃の形を取ったりします。
このタイプの男性の行動は注意深く考え抜かれているので、公の場で虐待的な面を見せてしまったり、法律上のトラブルに巻き込まれてしまうような不注意は滅多にしません。

 

もしあなたの相手が「水攻め男」だとしたら、何が起きているのか把握しようとして何年も苦労するかもしれません。
自分の反応が過剰だと感じたり、彼はそんなに悪い人ではないと思ったりしているかもしれません。
しかし、加害者があなたをコントロールして軽視する事は、長い間には知らないうちにあなたに悪影響をもたらします。
もし最終的にその男性から離れた時には、彼がいかに冷静に不気味なほど抑圧的だったか気づくにつれて、あなたはあとから何度も怒りを強く感じようになるかもしれません。

 

「水攻め男」タイプの主な考え方

・お前は頭がおかしい。お前は理由もなく急に自制心を失う。
・イカれているのは君の方だと、他の人たちを簡単に納得させることができる。
・いくら残酷な行為でも、僕が冷静である以上はそれが虐待だとは言わせない。
・お前が嫌がる事を私は知っている。

 

 

〈出典:DV・虐待加害者の実体を知る/ランディ・バンクロフト/監訳 高橋睦子 中島幸子 山口のり子/出版 明石書店〉

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