DVについて

DVの本質

DV・デートDVの本質的要素は、当事者間に「権力関係」 が存在することである。
女性が「力」 関係で優位にある状況の下では男性が被害者になる場合もあるが、 実質被害者の多くは女性である。

 

DVは男女間の性的結合関係のみならず、 同性間の性的結合関係においても生じる。
異性間の性的結合関係には、法律上·事実上の夫婦(関係継続中) のみならず「夫婦関係」に至る「関係形成」途上にある場合( 出発·出会い→途上(婚約中)→結婚直前)や、「夫婦関係」 の解消途上にある場合(別居→離婚→その後の関係)が含まれる。

 

交際相手からの暴力=デートDVとは何か

このうち「夫婦関係」に至る「関係形成」途上にある場合を、 DVとは区別して、 デートDVないし交際相手からの暴力と呼ぶ場合がある。
DVヘの対応で今日社会間題としてクローズアツプされているものの1つに、 いわゆるデートDV(交際相手からの暴力)がある。
デートDVが起きる関係とは、未来が不確定な関係(形成途上) である。
たとえ性交渉があったとしても未来は不確定であり、 友人以上婚約未満の関係である。

 

排他的性関係には至っておらず、第三者が2人の関係に割り込んできたとしても配偶者獲得の自由競争して許容される。
排他的性的関係でないにもかかわらず、相手を独占しようとしてデ ートDVは起きる。
2013(平成25年)のDV防止法改正により、 交際相手からの暴力(=デートDV)を「配偶者からの暴力」と「 類似しているが異なる事項」であるとして「配偶者からの暴力」の法的定義は従前のままとしながら、 DV防止法の全てを「準用」することとして、 交際相手からの暴力をDV防止法により、法的規制の対象としている(改正DV 28条の2)

 

暴力の態様

DV・デートDVの行為態様は、刑法上の暴行罪、傷害罪、 脅迫罪などの軽罪にあたる行為や、強姦罪、 殺人罪など重大犯罪にあたる行為から、刑法上の暴行罪にあたるとまではいえない身体的接触、 嫌がっているのに性的関係や性的行為を強要する行為などがあある。

 

「バカ、 アホ、まぬけ」「誰にメシを食わせてもらっていると思っているんだ!」と言う、「ぶん殴るぞ」 と脅す、大声で怒鳴る、無視する、口をきかない、物を壊す、 友人·親族との交友関係を制限する、孤立化させる、生活費を出し渋るなと、いわゆる今日においてもいまだにそれほど非難に値しないと考えられている 「グレーゾーシ」にあたる行為までが含まれる。

 

DV・デートDVの典型的な行為態様

■身体的暴力
殴る、蹴る、押す、小突く、叩く、物を投げつける、 髪の毛を引っ張る、首をしめる、包丁を突きつける、拳をかざす、 殴るふりをして脅す。

■性的暴力
セックスの強要、嫌がっているのに抱きつく、キスする、サド· マゾの強要、妊娠·中絶を強要する、避妊に協力しない、 ポルノを見せる。

■精神的暴力

・大声で怒鳴る。

・何を言っても無視する。

・口を利かない。
・「誰のおかげでメシを食わしてもらっているんだ!」と言う。
・「バカ、アホ、まぬけ、能なし」などと侮辱する。
・大切にしている物を壊す。
・「ぶっ殺してやる」「ひっぱたくぞ」と脅す。
・「別れるなら自殺する」「離婚するなら子どもは渡さない」 と脅す。
・子どもや親兄弟に危害を加えると言って脅す。

■社会的暴力
家族や友人との交際を制限する。
電話や手紙を細かくチェックする。
仕事を辞めさせる。

■経済的暴力
生活費を渡さない。

 

加害者/被害者の「関係性」と「危険度」に応じた支援と手続きの選択

DVやストーカーなどの親密な関係にある男女の暴力事案への対応で最も 難しいケースは、被害者が殴る蹴るの暴力を受けているにも関わらず、何度も加害者の下に戻ってヨリを戻す場合である。
被害者は「閉ざされた政治(権力)空間」において、 日常的に身体的・精神的·社会的苦痛を受けているが、 被害者にとって相手(加害者)と別れる事は、相手や子どもに自らの人生を「投資」 してきたことに鑑みれぱ人生の「挫折」 ともいうべき事態となる。
さらに別れた後の生活費や住居の確保、 子の教育機会の喪失を慮って、自らの「選択」が「 家族に迷惑をかけること」になると思い,何とか暴力·虐待をやめさせて良好な家庭環境を作っていきたいと考える場合が ある。

 

DV被害者支援については従来、 いかにして当事者間の関係を解消させて被害を防止するかに力点がおかれてきた。
DV防止法上も保讓命令制度やー時保護、 被害者の自立支援の対策が用意されている。
しかし、DVの被害者と加害者の「関係性」 に応じた支援を行う必要があるのではないだろうか。

 

例えば相手との「力」関係を変えてDVをやめさせ、 現在の関係を継続していきたいと考えている人たちにとっては、 刑事手続·保護命令制度やー時保護、離婚など、 相手との関係解消に向けての支援は当事者の要求に応えるものとは ならない。
このような場合「出て行ける」だけの資源を獲得できれば( 仕事、住居、健康、支援者)被害者は相手との力関係を変え、 暴力・虐待を排除して関係を継続することができる。
一方で当事者がおかれている客観的状況が「生命· 身体に重大な危害が加えられるおそれがある場合」 かどうかを見極める必要がある。

 

2010年宮城県石巻市で発生した殺傷事件を契機に、 警察庁生活安全局生活安全企画課長等は同年4月都道府県警察本部長等に「被害届が出されない場合であっても、加害者を逮捕し、強制捜査を行う」 と指示している。
例え当事者が相手との関係継統を望んでいたとしても、 被害者の生命· 身体に重大な危害が加えられる恐れがある場合には、 関係解消に向けた積極的介入が必要である。

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