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タイプ別DV加害者の特徴「被害者男」タイプ

「被害者男」タイプ

自分は辛く不公平な人生を送ってきたのだと「被害者男」は考えています。
話を聞くといつも能力を認めてもらえなかったり、信じていた人たちに痛い目に遭わされたり、善意を理解してもらえなかったりするそうです。
「被害者男」は、女性の思いやりと、彼の人生をよくしてくれると信じたいという気持ちに訴えます。
昔の相手にどんなひどい目に遭ったか、説得力があって心が張り裂けるような話をします。
時には子供との面会を制限されているとか、面会を許してもらえなくて悲しいといった事も付け加えます。
現在の相手の女性が彼の元の相手を嫌うように仕向けて、彼女に嫌がらせをしたり、うわさを流したり、彼女との親権争いで現在の相手にー役買わせたりしようとします。

 

「被害者男」は虐待の被害者が語る言葉をよく知っていて、例えぱ元の相手は「力と支配の事しか頭になかった」とか、僕を軽視していたとか、何としてでも自分のやりたいようにしようとしていたなどと言うかもしれません。
数年後には他の相手に、このように事実を逆にしてしまうような言い方をして、あなたのことを話す事でしよう。
あなたが彼の満足のいくように従っていれば話はまた別ですが。

 

「被害者男」は非常に自己中心的な関係の持ち方をします。
全てが彼の心の傷を中心として展開し、いつでも自分を注目の的にします。
子供がいる場合は、子供たちからも可愛そうに思ってもらえるように仕向けます。
「君は僕を理解してくれない。僕のよさを分ってくれない。君は僕の失敗をあげつらうんだ」と、絶えずあなたに訴えているような感じです。
それでも、二人の立場は実は逆ではないかとあなたは感づくでしょう。
あなたが「被害者男」に立ち向かって彼の見方の歪みを指摘すると、「被害者男」はあなたに虐待されているとか、「僕が君のいじめに反抗するのが、君は我慢ならないんだ」と言うでしよう。
この現実をあべこべにしてしまうところは「繊細そうな男」に似ていますが、内省的な心理学用語を使ったり、紳士的であったり、アルコール依存症から回復中であるようなふりをすることはないでしよう。
あなたの方から別れた場合、このタイプの男性は裁判所ヘ自ら出向き、子どもたちが自分にそむくようにあなたが仕向けているとか、自分はあなたからの虐待の被害者だとか主張して、親権を得ようとする恐れがあります。

「被害者男」はあなたからだけでなく、上司や近所の人たち、友人たちや道行く見知らぬ人たちからも不当に扱われていると主張する事がよくあります。
彼はすベての人から不当に扱われていて、自分には何も悪いところはないと信じているのです。

 

「被害者男」はこのような話をする事がよくあります。
「彼女からの虐待を何年も耐えて、反撃や自己防衛は全然してこなかったんです。でもとうとうこれ以上我慢がならなくなって、僕に対してしている事を分らせようと思って、少し仕返しするようになったんです。そうしたら僕が虐待的だってレッテルを貼られてしまって······。女は何をしても許されて誰も文句を言わないのに、男はちょっと何かをするとすぐに悪者にされてしまう」
このような話は、女性が世の中を動かしているから、男性は社会の中で総じて女性から被害に遭っているという話に広がります。
これは男性と女性のどちらが、立法機関や警察署や裁判官の地位やビジネス界などの大半を実際に占めているかを考えれば驚くべき歪曲です。
この現実を「被害者男」に説明すると彼らは、女性はよく男性に自分の事を可愛そうに思わせておいて、密かに裏で操っているという被害妄想を語ります。
このように物事を正反対にねじ曲げてしまう性質が「被害者男」の虐待行動の主な原因です。

 

もしあなたが「被害者男」の親密な相手で、虐待から逃げたいと考えているなら、彼にひどい扱いをされているにもかかわらず彼に対して罪悪感を持ってしまっていて、そのためになかなか関係を終らせられないでいるかもしれません。
彼が人生でとても苦労をしてきたので、見捨てる事で心にまたーつ痛みを与えるのは気乗りがしないのかもしれません。
あなたから別れてしまったら、身のまわりの事をしようとしないのではないか、うつ病で弱ってしまうのではないか、食事や睡眠をとろうとしないのではないか、もしかしたら自殺しようとさえするかもしれないと心配になるかもしれません。
「被害者男」は、あなたが自分の人生を容易にとり戻せないようにすために、無力で哀れな人間のように自分を見せるにはどうたらよいか知っているのです。

 

「被害者男」タイプの主な考え方

・僕はみんなに、特に今までに関係を持った女性たちに不当に扱われてきた。僕は可愛そうなんだ。
・僕を虐待的だと言って責める時、君は今までに僕を残酷で不公平に扱ったやつらの仲間入りをしているんだぞ。君が他のやつらと変わりない事の証明だ。
・僕が君に何かされたと思ったら、仕返しするのは道理にかなっている。君に必ず分ってもらえるように、かなりひどい仕返しをするのも正当な行為だ。
・恋愛関係で起こる虐待やセクシュアル·ハラスメントなど、男から虐待されたと文句を言う女は、男嫌いで男に仕返しをしたいだけだ。
・ひどい苦労をしてきたから、自分が何をしようとその責任は僕にはない。

 

 

〈出典:DV・虐待加害者の実体を知る/ランディ・バンクロフト/監訳 高橋睦子 中島幸子 山口のり子/出版 明石書店〉

 

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